カナダグースを構成するメンバーの革新的でレジリエンスな精神
2020年3月16日、カナダグースの生産をすべて停止しました。州政府が不要不急の事業活動の閉鎖を義務付ける前に、新型コロナウィルス感染症の蔓延を防ぐためにすべての施設を閉鎖するよう呼びかけたのです。しかし、私たちはそこで歩みを止めませんでした。
翌日には、閉鎖の影響を受けた従業員のための支援基金を設立し、社長兼CEOのダニー・リースは経営陣に、パーカの生産から個人用保護具(PPE)の生産に転換する方法を見出すという使命を担いました。
メイド・イン・カナダの新たな局面
私たちは、メイド・イン・カナダにこだわることを常に誇りに持ち、そのためにの国内アパレル業界での最大インフラ企業を構築してきました。カナダのアパレルメーカーで、PPEの生産をすぐに開始できる体制を整えているところは他にはありませんでした。
新たに立ち上げた「カナダグース・レスポンス・プログラム」では、カナダ全土の最前線で働く医療従事者や患者を守るために、医療用のスクラブやガウンを寄付することを約束しました。
PPEをゼロから開発する
カナダでは、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック宣言の間にPPE(医療向け防護服)の生産に移行した前例はなく、国内初の企業でした。 そのため、製品開発チームがスタッフへ製造転換の説明をする際に、詳しい内容を伝えることができませんでした。
9人のチームは、手術着や医療用ガウンの生地、サイジング、その他の仕様について調査しました。 PPEはパーカと比較するとシンプルな仕様ですが、どこにゴムが必要なのか、医療従事者が好むポケットの数はどれくらいなのかなど、細かい点を把握しておく必要があります。また、チームは地元の医療機関から調達したPPEを参考に、パターンメーカーがデザインを担当しました。
通常の製品開発では、段階を踏む作業を同時に行ったことで、開始して1週間後の金曜日には、材料が揃い、パターンと試作品が完成していました。生産に入る準備はできていましたが、初めに従業員を現場に復帰させなければなりませんでした。
私たちの最優先事項:従業員の幸福
閉鎖1週間後、従業員は100%ボランティアとして復帰してくれました。復帰を迫られていると感じることがないように、従業員が安全に安心して過ごせるように配慮し、PPEを作ることで国のために貢献しようと立ち上がった多くの社員に敬意を表しました。生産部門の従業員の40%が復帰を希望しました。彼らは予防措置を見た後、復帰していない人達に伝え、多くの従業員が安心し戻ってきてくれたのです。
私たちは工場を段階的に再開しました。従業員が戻る前に生産現場、食堂、洗面所を再編成し、ソーシャルディスタンスやその他の安全対策を講じました。専門家を招き、日々の安全衛生ガイドラインを作成し、戻ってきた従業員全員に日常のトレーニングを行いました。また、接触者を追跡するための社内プロセスも設定しました。
カナダ人の大半がパンデミックに見舞われている中、グース・クルーのメンバーは、国のために貢献できることに感謝していました。そして、目的を持って働くことで得られる希望を語ってくれました。
進化する生産プロセス
まず最初に手術着の生産を開始し、1週間後に医療用ガウンの生産を開始しました。材料、デザイン、検査作業は、カナダ保健省、州政府、医療機関との協働により対応することができました。
当初は生地が不十分で、PPEを大規模に生産する能力は制限されていました。 そこで私たちは、経験に基づくリスクを考慮し、手元にある通常ジャケットのライニング(裏地)に使用する生地でテストすることにしました。パーカの生産を停止していたため、倉庫にはその生地の在庫が100万メートル程ありました。
私たちはカナダ保健省と協働で、このライニング(裏地)がレベル2の医療グレードの要件を満たす機能試験をし、証明を得ました。承認後は、既存のサプライチェーンと協力して、より多くの生地を迅速に入手することができました。これにより、生地の供給課題を解決しただけでなく、サプライヤーへのビジネス提供にも繋がりました。
製造部門のリーダーシップチームは、ジャストインタイム製造などの新しいプロセスを導入し、さらなる効率化と無駄な工程の削減を実現しました。
34K
3回にわたる寄付で、カナダの7つの州の18の医療施設やニューヨーク市にある系列の病院に、無償で手術着と医療用ガウンを提供しました。2020年には、合計34,000着を寄付しました。
医療現場で働く人たちへの寄付
計画を発表するとすぐにPPEのリクエストが殺到しました。すべてのご要望に対応するために、コミュニティリレーションチームは専用のカナダグース レスポンスプログラムのメールアドレスを作成しました。それにより、メッセージをすべて確認することができました。
要望が非常に多かったので、PPEの寄贈先の決定の判断は大変難しいものでした。患者の多い病院、介護施設、大小の福祉施設など、さまざまな施設を選ぶようにしました。いずれの施設も、新しいPPEを購入する予算はありませんでした。
パーカの生産再開に向けて
5月末には1,000人以上の従業員がPPEの生産に復帰しました。7月初旬にはジャケットの生産を再開しました。第2シフトを導入することで、2種類の製品を生産するのに十分な人員を確保し、密な環境になることなく生産できるようになりました。
カナダでの供給
寄付金に加えて、連邦政府や州政府の機関と協力して、国内のPPEの予備供給を行いました。私たちは、生産原価で販売することを約束し、また生産工程の効率化を図ることで、当初の見積もりよりもコストを下げることができました。また、カナダ保健省をはじめ、PPEの生産に関心のある団体にもデザインを提供しました。
前進する
{試練が本質を現す}COVID-19のパンデミックは私たちに試練を与えましたが、従業員の対応をこれ以上ないほど誇りに思っています。 彼らは、私たちがブランドとして大切にしている気概と革新性を体現し続けています。また、導入したプロセスやピボットの際に得た教訓は、効率を高め、無駄を省き、お互いの健康を気遣うということに役立っています。